「陸と海の野生動物保全論」-学部共通特別講義B


8/28-31で上記の特別講義があります。
担当は和田一雄 東京農工大学農学部 元教授。


場所は21号館408号室
28、29日は1-4コマ:9時〜16時30分、30,31日は1-3コマ:9時〜14時45分。




講義概要


 人間の生産活動は陸と海で大きく異なる。陸では農林業が主であるが、個人の土地の所有権・使用権を基礎にして一定の投資に見合う収穫を期待する。海では沿岸の入会権から発生した海域使用権を託された漁業組合が沿岸域の海藻、漁業資源を漁獲する。ここでは個人に属する海域の所有権はなく、従って投資もない。


 陸、海に生活する野生動物は生息環境として否応なく人間の活動と重複、あるいは隣接して一定の関係を持つ。最近は人間の一方的環境利用が目立ち、野生動物は追いやられている。そこで、人間と野生動物がどのように共存が可能かを陸上動物ではニホンザル、海棲動物では鰭脚類を例に取り、紹介する。


 ニホンザルは1948年以来の長い生態学的、保全学的研究の歴史があり、両者の研究がどのような関係のもとに展開したのか、将来にどのような課題を残しているのかを検討する。
 鰭脚類ではラッコ・オットセイが1741年以来の猟業の歴史を持つので、その間の資源管理がどのような学問的、社会経済的、国際政治上の関係の中で行われてきたのかを吟味し、問題点の指摘を行う。


 これらの検討の中から陸域、海域の共通点と独自の問題点を抽出し、検討課題とする。

  1. 陸と海の産業活動の共通性と特殊性、それと関係した野生動物保全の問題点
  2. ニホンザルの生態・保全
    1. 霊長類学の中で保全学はどのような位置にあるのだろうか
    2. 研究史の方法、その史的区分
    3. 黎明期:どのようにしてニホンザル研究が立ち上がったか
    4. 準備期:研究、財政の面から研究の基盤形成過程を検討する
    5. 開始期:生態学の中からどのようにして保全学が形成されたかの吟味を行う
    6. これからの保全学の展望
  3. オットセイの資源管理
    1. 資源略奪の時代:無制限にラッコ・オットセイを猟獲した
    2. 市場価格管理の時代:大量猟獲で価格が下落するのを防いだ
    3. 初歩的資源管理の時代:個体数が激減して猟獲に影響した
    4. 資源管理の時代:国際的保護条約の下に猟獲を制限した
    5. 生態管理の時代:生態を明らかにしてそれに基づく管理を行う
  4. 陸・海を統一的に保護管理しよう


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